日本の革専用環境ラベルTop
 
日本版エコレザーの開発
(環境対応革開発実用化研究事業)
 
1.エコレザー基準の調査と市場革の適合割合
   エコレザーに関する基準は既に主にヨーロッパで制定されています。近年になって中国も独自の基準を制定しました。それらの中で有名なのは主に繊維素材を対象とした「エコテックス100」と皮革素材を対象とした「SG」です。平成14年度から日本で流通している革がそれらの基準に合致しているかどうか(社)日本タンナーズ協会の協力により各地区から革を収集して分析しました。また、輸入革についても同様の分析を行いました。後述するJSG基準に適合できない項目の出現率を表に、全項目を合わせた適合率を図に示しました。
   
  表 JSG基準不適合項目の出現率
 
項   目 国産革 輸入革
染色摩擦堅ろう度(湿潤試験) 26.6 58.7
ホルムアルデヒド(16 mg/kg未満)1) 44.0 43.5
ホルムアルデヒド(16〜75 mg/kg)2) 33.0 30.4
ホルムアルデヒド(75〜300 mg/kg)3) 6.4 4.3
禁止アゾ染料 10.1 10.9
六価クロム 4.6 6.5
溶出鉱物鞣剤 1.8 6.5
溶出重金属(鉛) 3.7 3.8
溶出重金属(コバルト) 0.9 4.3
  *平成14年度〜19年度(国産革109点、輸入革46点)に分析した試料革でのJSG基準不適合 項目と出現率。
*ホルムアルデヒド1)はエキストラ用、2)は皮膚接触用、3)は皮膚非接触用を示す。
   
 
  図 JSG基準適合率(平成14年〜19年)
   
2. エコレザーを製造する技術的課題と解決方法
   市場調査から国産革は輸入革よりJSG基準に対する適合率が勝っているものの、いつかの技術的課題が明らかになりました。すなわち、染色摩擦堅ろう度、溶出ホルムアルデヒド、溶出六価クロム、溶出重金属、禁止アゾ染料です。これらの課題を解決する方法は次のとおりです。
   
  (1)染色摩擦堅ろう度の向上
     長年、各企業が取組んでいる一番難しい問題です。一般的には、結合力の強い染料を選ぶ、界面活性成分の多い加脂剤は避ける、水洗を十分に行うことなどが染色堅ろう度向上に有効です。
   
  (2)溶出ホルムアルデヒドの削減上
     ホルムアルデヒド系の鞣剤、ホルムアルデヒドを原料とした合成鞣剤やなめし処理中にホルムアルデヒドを遊離するなめし剤、および仕上げにホルムアルデヒドを使用すると相当量のホルムアルデヒドが溶出します。ドラム処理ができる場合は酸性亜硫酸ナトリウムやある種の合成タンニン等が溶出量の削減に効果がありますので皮革試験所等に相談して下さい。
   
  (3)溶出六価クロムの削減
     クロム鞣剤に六価クロムが含まれていることはありません。しかし、地油が多く残存し、しかも乾燥した条件では三価クロムが酸化されて六価クロムに変化することがあります。予防として地油は十分に除去し、酸化されやすい魚油等の加脂は控えることが必要です。また、還元作用のある薬品も予防効果があります。
   
  (4)溶出重金属の削減
     通常のなめし方法で製造すればクロムの溶出も基準以下に収まります。しかし、まれに他の重金属が基準値以上検出されることがあります。仕上げに用いた顔料に含まれていたと考えられますので、薬品会社に確認してこれらを含有していない仕上げ剤を使用しましょう。しかし、仕上げ方法に留意すれば問題は発生しないでしょう。
   
  (5)禁止アゾ染料への対応
     禁止アゾ染料は使用すべきでない染料です。使用している染料がこれに該当していないか必ず薬品会社に確認しましょう。
   
3.日本版エコレザーの基準(JSG基準)
   先発エコレザー基準と市場調査の結果を踏まえて、先発基準と遜色なく、かつ実現可能性があるものとして次の日本版エコレザー基準とラベルの図案を提案しました。それには人体の安全性に係る項目に「臭い」と「染色摩擦堅ろう度」を加えてあります。日本版エコレザーの略称を「JSG」としました。これは日本(Japan)のSG(先発ラベルであるドイツのSchadstoff Gepruft;有害物質検査済み、の略称)という意味です。
   
  表 日本版エコレザー基準(JSG基準)
 
検査項目 検査細目 基準値
01 臭気 革臭気・5段階官能等級 3級
02 ホルムアルデヒド 水抽出ホルムアルデヒド量 16/75/300 mg/kg (F1/F2/F3)
03重金属 溶出鉛量 0.2/0.8 mg/kg (M1/M2)
04 同上 溶出カドミウム量 0.1/0.1 mg/kg (M1/M2)
05 同上 溶出水銀量 0.02/0.02 mg/kg (M1/M2)
06 同上 溶出ニッケル量 1.0/4.0 mg/kg (M1/M2)
07 同上 溶出コバルト量 1.0/4.0 mg/kg (M1/M2)
08 同上 溶出六価クロム量 検出せず
09金属鞣剤 溶出総クロム量 200 mg/kg
10 有機塩素化合物 ペンタクロロフェノール 0.05/0.5 mg/kg (P1/P2)
11 染料 発がん性芳香族アミン量 検出せず
12 同上 発がん性染料(製法宣言項目) 使用せず
13 染色摩擦堅ろう度 乾燥試験、フェルト汚染等級 3-4級(顔料仕上)
3-4級(ナチュラル仕上淡色)
2-3級(ナチュラル仕上濃色)
14 同上 湿潤試験、フェルト汚染等級 2-3級(顔料仕上)
2-3級(ナチュラル仕上淡色)
2級(ナチュラル仕上濃色)
  適用範囲の製品区分は全て成人用のみとし、乳幼児用は除外した。すなわち、ホルムアルデヒドはFと略し、16 mg/kgはF1と示し、エキストラ用(旧乳幼児用)、次いで75 mg/kgはF2と示し、皮膚接触用、300 mg/kgはF3と示し、皮膚非接触用を意味する。重金属はM、PCPはPと略し、MPの内、M1及びP1はエキストラ用(旧乳幼児用)、M2及びP2は成人用を示す。
   
 
(表側) (裏側)
  図 JSGラベル意匠図案(マーク)の表裏の様式例(仮案)
(平成20年度に新しい意匠図案作成予定)
       
3.日本版エコレザーの基準(JSG基準)
   天然皮革は他素材と比べ、吸湿性、放湿性に優れた快適な素材です。
裏革が天然皮革と合成皮革の靴を試作し、歩行実験を行いました。
   
 
靴内温度 靴内湿度
  図 歩行による靴内温度・湿度の変化
   
   天然皮革では靴内部の温度、湿度が良好に保たれています。合成皮革の裏材では歩行後温度、湿度とも高く、いつまでもムレた状態です。
 エコレザーは人体に影響を及ぼすと思われる薬品類等が基準値以下であり、しかも天然皮革の優れた特性を保持しています。
   
おわりに
   日本版エコレザー基準は日本で製造された革が全てクリアして欲しい基準です。これにより消費者に日本製の革を安心して使用していただくことができます。将来の革づくりには、これを基礎としてさらに付加価値をつけた個性的な革を開発して国際的な競争に打ち勝つことが望まれています。それにより日本の皮革産業が持続的に発展できるものと確信しています。
 注:JSG基準は日本皮革技術協会が(社)日本タンナーズ協会に提案しているもので、現在、運用方法などを検討しているものです。しかし、(財)日本環境協会により「革かばん類系」の“エコマーク”取得に際してJSG基準が採用されており、使用される革素材についてはJSG基準値に適合していることが必要となっています。
   
  日本皮革技術協会 平成20年3月